高齢者施設の演奏で著作権が切れている曲を探す方法
母の日コンサートを前に、受講生の方から次のようなご相談をいただきました。
「著作権料を支払わずに演奏できる曲を、もう少し幅広く知りたいのですが、どのように調べればよいでしょうか」
高齢者施設での演奏会では、唱歌、童謡、日本歌曲、昭和歌謡などを取り入れる機会が多くあります。
ご利用者様がよくご存じの曲を選ぶことで、一緒に歌っていただいたり、昔の思い出を振り返っていただいたりする時間を作れます。
一方で、演奏活動を続けるうえでは、楽曲の著作権について確認する姿勢も大切です。
この記事では、著作権の保護期間が終了している曲の基本的な探し方と、高齢者施設で喜ばれる選曲の考え方をご紹介します。
著作権が切れている曲とは
日本では、著作権の保護期間は、原則として著作者の死後70年までです。
保護期間が終了した著作物は「パブリックドメイン」と呼ばれ、原則として著作権者の許諾を得ずに利用できます。
ただし、すべての作品が一律に「発表から70年」で判断されるわけではありません。
作詞者と作曲者が異なる曲では、歌詞と曲のそれぞれについて確認が必要です。外国作品、無名・変名作品、団体名義の作品などは、保護期間の考え方が異なる場合もあります。
文化庁の案内でも、著作権の保護期間は原則として著作者の死後70年までと説明されています。
著作権が切れている曲の基本的な探し方
曲の著作権を確認するときは、曲名だけで判断せず、次の順番で調べていきます。
1.作詞者と作曲者を確認する
歌詞のある曲には、作詞者と作曲者がいます。
まずは、使用する楽譜や楽譜集の奥付、曲目解説などを見て、作詞者と作曲者の名前を確認します。
童謡や唱歌の中には、作詞者と作曲者のどちらか一方の著作権だけが残っている場合もあります。
「古くから歌われている曲だから大丈夫」と判断せず、歌詞と曲の両方を調べることが大切です。
2.作詞者と作曲者の没年を確認する
次に、作詞者と作曲者が亡くなった年を調べます。
著作権の保護期間は、原則として著作者が亡くなった翌年の1月1日から数えます。
ただし、過去の法改正や作品の種類、作品が公表された時期などによって判断が複雑になる場合があります。
没年だけを見て即断せず、不明な場合はJASRACや著作権の専門窓口へ確認すると安心です。
3.J-WIDで作品情報を確認する
JASRACが提供している作品データベース「J-WID」では、曲名、作詞者、作曲者などから作品情報を検索できます。
同じ曲名の作品が複数登録されていることもあるため、作詞者、作曲者、編曲者まで確認します。
J-WIDでは、著作権が消滅している著作者についても表示上の案内があります。
J-WIDに掲載されていないからといって、自由に利用できるとは限りません。JASRAC以外の団体や権利者が管理している可能性もあるため、分からない場合は確認が必要です。
4.使用する楽譜の編曲者を確認する
原曲の著作権が終了していても、新しい編曲には別の著作権が発生している場合があります。
たとえば、昔から歌われている唱歌でも、近年出版された楽譜に独自の前奏、間奏、伴奏、構成などが加えられていれば、その編曲部分が保護されている可能性があります。
曲名と原作者だけではなく、使用する楽譜に記載されている編曲者や出版情報も確認しましょう。
市販の楽譜を購入して、その楽譜を見ながら演奏することと、楽譜を無断でコピーして配布することは別の問題です。
施設で使用する歌詞カードや楽譜を作る場合も、複製に関する権利を確認する必要があります。
5.伴奏音源の権利も確認する
原曲がパブリックドメインになっていても、市販のCDやインターネット上の伴奏音源を自由に使用できるとは限りません。
録音された音源には、演奏者やレコード製作者などの著作隣接権が関係します。
文化庁も、著作権の保護期間が終了した楽曲であっても、CDや配信音源には別の権利が残っている可能性があると案内しています。
伴奏音源を使用する場合は、購入した音源の利用条件を確認します。
YouTubeなどで見つけた音源を、そのままダウンロードして施設演奏で使用することは避けた方が安心です。
高齢者施設側が著作権の手続きをしている場合もあります
高齢者施設や運営法人が、JASRACなどと音楽利用に関する契約を結んでいることもあります。
その場合でも、演奏者側の判断だけで「施設が契約しているはず」と考えるのではなく、事前に施設のご担当者様へ確認しましょう。
確認するときは、次のように丁寧にお尋ねできます。
「当日の演奏曲について、著作権に関するお手続きは施設様で行われていますでしょうか。演奏者側で必要な確認がございましたら、ご教示いただけますと幸いです」
JASRACでは、施設で管理楽曲を利用する際の手続きや、手続きが必要かを確認するための案内を公開しています。
施設の契約状況、演奏会の内容、入場料の有無、演奏者への報酬の有無などによって扱いが異なる場合があります。
判断に迷うときは、施設のご担当者様やJASRACなどの管理団体へ確認してください。
高齢者施設では一緒に口ずさめる曲が喜ばれます
著作権の確認と同じくらい大切なのが、ご利用者様に喜んでいただける選曲です。
高齢者施設では、
・季節を感じられる唱歌
・昔から親しまれている童謡
・ご利用者様の青春時代に流行した歌
・歌詞や旋律を思い出しやすい曲
・無理のない音域で歌える曲
などが喜ばれます。
母の日コンサートであれば、母、家族、故郷、春の風景などを感じられる曲を組み合わせると、演奏会全体に温かい流れが生まれます。
ただ有名な曲を並べるのではなく、
「この曲を聴いたときに、どのような気持ちになっていただきたいか」
「どの曲なら、自然に口ずさんでいただけるか」
という視点で考えることが大切です。
演奏技術だけでなく選曲が継続依頼につながります
高齢者施設での演奏では、難しい曲を完璧に演奏することだけが求められているわけではありません。
施設演奏で大切にしたいのは、
・季節感があること
・ご利用者様が安心して聴けること
・一緒に参加しやすいこと
・懐かしい記憶につながること
・施設の進行に無理のない構成であること
です。
ご利用者様が笑顔で歌ってくださったり、演奏後に「懐かしかった」と声をかけてくださったりすることが、次回の演奏依頼につながります。
演奏者が届けたい曲だけでなく、聴いてくださる方が楽しめる曲を考えることが、地域で継続して活動するための大切なポイントです。
著作権を調べる習慣をつけましょう
著作権の確認は、難しく感じるかもしれません。
最初からすべてを覚える必要はありません。
演奏予定の曲について、
・作詞者は誰か
・作曲者は誰か
・それぞれの没年はいつか
・編曲者は記載されているか
・使用する音源に利用条件はあるか
・施設側で著作権の手続きをしているか
を、一曲ずつ確認していきましょう。
確認した内容をノートや表に残しておけば、次回の演奏会でも役立ちます。
「おそらく大丈夫だろう」と考えるのではなく、分からないことを確認しながら活動する姿勢が、施設から信頼される演奏者になることにもつながります。
なお、この記事は一般的な情報をお伝えするものであり、個別の楽曲について著作権の有無を判断するものではありません。実際に演奏する際は、作品情報、利用方法、施設の契約状況などをご確認ください。
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演奏活動では、演奏技術だけではなく、選曲、季節感、参加しやすさ、著作権への配慮も大切です。
一曲ずつ丁寧に調べながら、聴いてくださる方に安心して楽しんでいただける演奏会を作っていきましょう。